GIGAスクール構想の推進により、全国の小中学校でタブレット端末を活用した学習が一般化しています。調べ学習やドリル、宿題に至るまでデジタル化が進む中、従来の「ノートへの手書き」や「漢字を繰り返し書いて覚える学習」は、今後どのように位置づけられていくべきなのでしょうか。
今回、全国の男女485名を対象に「タブレットと手書きの学習バランス」に関するアンケート調査を実施したところ、デジタル化が進む現代においても「手書き」の価値を再評価し、双方のバランスを模索する大人たちの率直な意見がうかがえる結果となりました。
<調査概要>
- 調査主体: おうち部
- 調査方法: インターネット調査
- 調査対象: 全国の10代~60代以上の男女
- 有効回答数: 485名
- 調査期間: 2026年7月1日~2026年7月3日
【回答者の属性】
- 性別: 男性 43.3% / 女性 54.8% / その他・回答しない 1.9%
- 年代: 10・20代 7.0% / 30代 27.4% / 40代 38.8% / 50代 19.8% / 60代以上 7.0%
- 子どもの有無・状況: 子どもはいない 42.9% / 小学校低学年 18.8% / 小学校高学年 14.6% / 中学生 6.2% / 高校・大学生 8.0% / 社会人 9.5%
セクション1:「完全デジタル化」を希望する声は少なく、手書き維持が多数派に
まず、「もし小学校の学習方針を自由に決められるとしたら、手書きとタブレットのバランスはどれが理想か」という問いに対しては、以下のような結果となりました。

- 1位:「手書きとタブレットを半々」 58.6%
- 2位:「ほぼ手書き重視」 36.5%
- 3位:「ほぼタブレット重視」 4.3%
- 4位:「完全タブレット(デジタル)」 0.6%
「完全タブレット化」を希望する回答はわずか0.6%にとどまり、「手書きとタブレットを半々」が約6割を占めました。 さらに、「小学校でのノートへの手書きや漢字の反復練習はどのようにあるべきか」という問いに対しても、「ある程度は維持するべき(70.3%)」「維持・または増やすべき(24.3%)」と、全体の約95%が手書き学習の存続を支持する傾向が見られます。

社会全体でペーパーレス化が進んでいるものの、こと初等教育の現場においては、多くの人が依然として手書き学習の必要性を感じていることがうかがえます。
セクション2:手書きが支持される背景にある「記憶の定着」と「社会での実用性」
なぜ、ここまで手書き学習が支持されているのでしょうか。手書きの学習に最も価値やメリットを感じる点を聞いたところ、最も多かったのは「脳が刺激され、記憶の定着や基礎学力が向上する点(63.5%)」でした。

また、寄せられた自由記述からは、社会人としての実体験に基づく実用面への懸念も垣間見えます。
「大人になってスマホやパソコンを触る機会が増え、漢字を読めても書けないという人が周りに何人かいます。子どもの頃にしっかり書いていたおかげで、私は今でも書けます」(30代・女性)
「社会に出てから自分の名前や文字を書くことは少なからずあります。そんな時に字が汚いと恥ずかしく思う時があるので、字を書く練習は必要だと思います」(20代・男性)
「現状、会社で年上でも漢字や言葉を知らない人が少なくない。すぐに検索して答えが出ると体で覚える事が無いので定着しない」(40代・男性)
手書きを重要視する背景には、「社会に出た際に、漢字が書けなかったり字が汚かったりすることで困らないようにしてほしい」という、実生活を見据えた考えがあると考えられます。
さらに年齢別の集計では、「努力の跡が物理的なノートとして残る点」をメリットとして選んだ割合が、30代以上では3%前後だったのに対し、10代・20代の若年層では11.8%とやや高い傾向にありました。デジタルネイティブな世代ほど、手書きの「物理的な達成感」に独自の価値を見出している可能性も示唆されています。
セクション3:一方で、回数を指定した「反復練習」には否定的な傾向も
手書きの価値が広く認められる一方で、従来の「宿題の形式」については見直しを求める声も少なくありません。
手書き学習のマイナス面やデメリットについて尋ねたところ、「時間ばかりかかって効率が悪い(12.0%)」や「物理的な負担(13.0%)」を上回り、「『ただマスを埋めるだけの作業』になってしまい、学習意欲や楽しさを奪ってしまう点(38.8%)」が最多となりました。

特に、「漢字を何回もノートに書いて覚える宿題」に対する意見には、その傾向が顕著に表れています。

- 効果はあるが、回数指定(絶対に〇回書きなさい等)の強制はしなくて良い:72.2%
- 非常に効果的であり、体で覚えるために絶対に必要な修行だと思う:22.5%
自由記述でも、自身の過去の経験を踏まえた意見が寄せられました。
「中3の時の担任が、毎日ノートを6ページ埋めるという宿題を出す先生で、ひたすら漢字や英文を書きなぐってなんとか埋めていました。これが苦痛で、ただの作業になっていたと感じます」(40代・女性)
「自分は3回くらいで覚えられるタイプだったので不要と感じます。そのような単純作業が評定に繋がってしまう場面があり疑問に思いました」(30代・男性)
「手書き」自体の学習効果は認めつつも、目的が「指定された回数をこなすこと(作業化)」になってしまう指導方法には、多くの人が疑問を抱いていると言えそうです。
セクション4:タブレット学習の導入で見えてきた課題と難しさ
それでは、タブレット学習を中心とした場合はどうでしょうか。自由記述からは、実際にタブレットを活用する中で見えてきた「新しい形の課題」も指摘されています。
【自発的な思考力の低下への懸念】
「調べ学習イコールGoogle検索になっていて、昔のように辞書や本を使って自分で考えなくなっているように感じます。まとめようともせず、タブレットからの丸写しになってしまうことも」(50代・男性)
【システム判定による学習の滞り】
「子どものタブレットでの宿題で、とめ、はね、はらいの判定が厳しくなかなか正解にならないところにいらだち、子どもも投げ出してしまいます。漢字の書き取りは手書きで先生が評価してほしいと感じることもあります」(30代・女性) 「指でなぞっても画面が反応せず、子どもがイライラしていて本末転倒だと感じた」(40代・女性)
タブレットは便利である反面、「答えを簡単に写せてしまう」「システムの仕様によって学習意欲がそがれる」といった独自の難しさも抱えていることがうかがえます。
セクション5:子どもの年齢によって変化する、反復練習の必要性への認識
今回の調査では、回答者自身のお子様の年齢(状況)によって、特定の設問に対する捉え方に違いが見られることもわかりました。
「漢字を何回も(10回、20回と)ノートに書いて覚える宿題」についての率直な意見を尋ねた設問において、「非常に効果的であり、体で覚えるために絶対に必要な修行だと思う」という選択肢を選んだ人の割合は以下の通りです。

- 子どもはいない:18.8%
- 現在、小学校高学年の子どもがいる:28.2%
- 現在、高校生・大学生の子どもがいる:33.3%
この選択肢を選んだ人の全体平均は22.5%でしたが、実際に小学校高学年や、高校生・大学生のお子様を持つ親御さんの層では、全体平均を上回る結果となりました。
これは、子どもの学習プロセスやテストの結果を身近で見ていく中で、「ある程度は手を動かして反復しないと定着しにくい」という現実的な課題に直面しているからではないかと推測されます。「回数指定の強制はしなくて良い(72.2%)」という意見が全体としては多数派ですが、現場の実態を知る世代ほど、反復練習の実用性を肯定的に捉える傾向があるようです。
総括:適材適所で使い分ける「ハイブリッド型」の模索が続く
今回のアンケート結果を通じて見えてきたのは、「タブレットか、手書きか」という二者択一ではなく、それぞれの長所と短所を理解した上でバランスを探る大人たちの姿でした。
情報を効率的に調べたり、動画を活用して視覚的に理解を深めたりする場面ではタブレットが力を発揮するでしょう。一方で、知識を脳に定着させ、思考を整理するための基礎的なトレーニングとしては、手書きが依然として有効だと考えられています。
デジタルの利便性を取り入れつつも、手書きの良さを残していく。今回の調査で約6割が「手書きとタブレットを半々」と回答したように、両方の特性を適材適所で使い分ける「ハイブリッド型」の教育こそが、今後多くの人々から求められていくスタンダードになるのではないでしょうか。



コメント